そして始まる。
2010/02/07 21:37:59
本日の【僕らの日常。】はのろり、のろりと物語が動きます。
くれはの一言がキッカケで恭ちゃんは泣き、青山は項垂れ、じゅんじゅんは傷つき、快は呆れます。
ノリノリなのはいつだってくれはだけ。
さて、何が起きたのでしょうか!?
…番組紹介的な感じで(笑)
僕は今、とんでもない問題にぶち当たっています。
ごく普通の高校生活を送っていれば絶対に起こり得ないだろうという問題に。
「何か作ろうよ」
「…は?」
僕を含め、四人が一斉に首を動かし、声を放つ。
視線を一身に浴びているのは、彼らの中でぶっちぎりの変人であるくれはだ。
天気が良い、という理由で昼食は屋上でとることが決まり、何故か僕まで引っ張られ、こうして屋上に座っているわけだけれど、どうやら穏やかに食事はできないらしい。
「なんなの?いきなり」
「よく聞いてくれたわね、青山!」
「いや、聞かねーとわかんねーから」
快のツッコミを無視し、くれはは腕を組み、得意げな表情を浮かべて言った。
「この世の中、問題を抱えても相談できる人もいなくて一人悩む人がいるでしょう?だから、そんな人たちをアタシたちが救ってやろうじゃないの!」
「面倒」
じゅんじゅんの一言にバッサリと斬られるが、それくらいで負けるくれはじゃない。
ヤツのHPはまだまだ余裕だ。
「じゅんじゅん…もっと優しさと言うか、思いやりを持つべきよ?」
「煩い。他人に気を遣って生きてくなんて絶対に嫌だね」
「うわ…そんな事言ってるとじゅんじゅんが見捨てられちゃうわよ?冷たいヤツ!!って」
「そ、そんなことねーよな?快」
静かに顔をそらす快を見て、じゅんじゅんは15のダメージを受けた。
続いて視線を向けた青山にも顔を背けられ、さらに25のダメージ。
僕の方にも視線を向けたらしいけど、すでに僕はくれはの手の内。
文字通り、くれはに抱きしめられているので、じゅんじゅんに答えることは不可能だ。
じゅんじゅん、さらにさらに30のダメージ!!
残りはあと30だっ!
「ぐ…だ、だけど!ノリノリなのはくれはだけだろ!?」
「みんなやるわよーっ」
「「「おー…」」」
僕と快、青山のやる気ゼロの返事が響き渡る。
青い空の下、僕らの気分はどこまでも曇天と化す。
そんな光景を目の当たりにし、ついにじゅんじゅんは30のダメージを食らってHPはゼロ。
がっくりとひざをついてうなだれるじゅんじゅんを見て、くれははにやりと笑う。
…あ、嫌な予感。
「じゅんじゅん、アンタもすっごい特技持ってるんだから活用しなさい!動物と話せるなんて貴重な能力、世のため人のためにしか使えないわよ!?」
「え?じゅんじゅん、そんなすごい技持ってるの?」
「他人に言うんじゃねーよ!」
「恭ちゃんは他人じゃないわ!もうメンバーよ!」
「なんの!?」
僕の叫びに、くれははようやく解放して僕らの前に立つ。
腰に手を当て、ポケットから小さなメモを取り出して叫ぶように言い放った。
「エヌ・エー・ゼット・アイ・エム・小文字のイーにちょんと小文字のエス!!」
「…ちょん?」
「その名も!NAZIMe's(なじみーず)よ!!」
なじめーず、じゃないの?
学校で浮いてます、的な…いや!僕は違う、断じて違う!!!
「問題何でも解決してやるぜ☆的な感じで行くからねっ」
「いきなりなんだよってなるじゃねーか。第一誰も知らねーだろ?そんなわけわかんねー組織」
「ふっふっふ…甘いわね、快!」
あ、嫌な予感二回目。
「これを見よ、とくと見よ!!」
じゃん、とくれはが堂々と差し出したのは、明らかに合成された僕らのポスター。
戦隊モノみたいなスーツをまとったどっかのどなたかの顔には僕ら。
ヘルメットくらいかぶってもいいのに…あ、そしたらわからないか。
いや、わかんなくていい!!
「何で僕がピンクなの!? くれはでいいじゃん!!!」
「そこか!?怒るポイント違うだろ!」
「アタシはみんなのアイドルのくれたんなの」
レッドと化した快のツッコミを聞き流し、わけのわからないことを言ったくれはの指の先を見つめる。
そこにはうさぎのような、猫のような、とにかくモコモコフワフワしていて羽の生えたイキモノが写っており、顔は満面の笑みを浮かべたくれは。
イキモノではなく、バケモノ…いやいや、そんな事を口にすればどんな目に遭うか…
「なんで青山がグリーンで、おれがブルーなんだ?青山がブルーでいいじゃん。名前がそうなんだから」
「馬鹿ね。ブルーはモテるのよ?アンタ一番女の子に人気あるんだから当然じゃない」
「当然って…」
またもや落ち込むじゅんじゅんだが、当然だ。
女の子に好かれていることを重荷に思っているのだから、今以上に目立つことをすればさらなる人気がじゅんじゅんを待っている…!
「みんなっ!頑張るわよ!」
今度は声も出ず、僕らはただうなだれるだけ。
くれはのこのときだけのノリで終わればいいと誰もが思っていたのに、次の日学校中に見覚えのあるポスターが貼られまくっているのを見てため息を吐いたのは、絶対に僕だけじゃない。
楽しいのはくれはだけです。